クリニックでは随時、お子さんを理解し支援をするのに大切と思われる情報を資料や学習会形式でご家族にお伝えしてまいります。
発達とは
発達に関連する言葉として、「成長」、「発育」という似たような表現があります。こどもは年齢とともに身体が大きくなり、いろいろなことができるようになります。
- 身体が大きくなっていく量的な変化を、「成長」
- いろいろなことができるようになっていく機能的な変化を、「発達」
- 成長と発達がお互いに影響しあいながらすすんでいく変化を、「発育」
と呼びます。
発達のすすみ方にはいくつかの決まりごと(発達の原則)があることがわかっており、順序性、方向性、個別性、臨界期と呼ばれています。ここでは詳細はふれませんが、まずは「発達はすすみ、年齢とともにできることは増えていく」、「それぞれのこどもの発達の流れは異なっている」、「年齢によって適切な支援の内容は変わっていく」ということを、ご理解いただければと思います。
この複雑な変化の道のりは発達の軌跡(トラジェクトリー)と呼ばれ、発達を時間の流れで理解していくことや個別性の視点が重要視されています。つまりある時点の評価だけでなく、経過をみていく中で、その時々で、それぞれのお子さんにとって、必要な支援を考えていくことが大切になります。
発達障害と診断
「発達障害」にはいくつかの定義がありますが、皆様が耳にする場合は、多くが発達障害者支援法という法律で定義された意味合いで使われています。正確には発達障害自体は「診断」ではなく、以下の図のような複数の「診断」を総称した用語として定義されています。
発達障害には複数の「診断」が含まれていますが、それは発達に様々な要素があり、それぞれに見ている視点が異なっているからです。
例えば、微細な運動、粗大な運動、言語の理解、言語の表出、視覚的な認知・・・といった発達の要素があり、それぞれに得意、不得意といったような連続する状態で表される評価があり、発達は以下のようなプロフィールで表すことができます。そのうち、特定の領域に困り感があり周りの理解や配慮が必要な場合には、それを共有するための用語として「診断」が用いられることとなります。
「診断」の整理の仕方(診断基準)には変遷があり、近年では2014年に新しい国際的な診断基準が示されました。そこでは、これまで「障害」と訳されてきた"Disorder"という用語について「症」と訳すことが提案されました。以後、「障害」が含まれた診断名が用いられることは少なくなっています。
つまり「診断」は、こどもの状態像(発達特性と困り具合)を周りが理解し共有するために専門家の間で整理されたキーワードと言えます。それは個別性を含んだ情報として、具体的なお子さんのニーズや支援とともに理解されるべきものと言えます。
発達特性と支援
「診断」の情報は大切ですが、支援を考えていくためには「発達特性」を理解することが必要となります。「発達特性」は「認知特性」と呼ぶこともでき、それぞれのお子さんが持つ情報処理の傾向のことです。
例えば視覚的な情報処理が強いお子さんがいたり、衝動的な反応をするお子さんがいたりします。発達特性の理解をすすめていく方法には、大きく2つあります。1つは「診断」をキーワードとしてたどっていく方法です。
「診断」は発達特性を専門家がわかりやすく整理した用語ですが、その用語を通して様々な研究や臨床経験、支援のやり方が蓄積されてきました。最近はそういった情報をまとめた一般向けの書籍が、たくさん出版されるようになりました。クリニックでは参考となる書籍をご家族に紹介しており、ご家族向けの学習会も予定しています。
もう1つは、お子さんの発達評価のプロフィールから理解する方法です。発達検査などの評価結果には「診断」には十分に反映されていないような発達特性の情報も含まれています。クリニックでは評価結果を保護者の皆様にご説明し、希望される方にはまとめの文書をお渡ししています。
またクリニックでは、言語聴覚士、作業療法士によるリハビリテーションを行っています。リハビリテーションでの実際の関わりを通して発達特性や有効な支援の方法を評価・検討し、ご家族の理解や周囲と共有するためのサポートをしています。